数日前(今日これを書いているのは2021年1月26日)、曙ブレーキ工業の株価が急騰しました。
その理由は、「曙ブレーキ工業が米国メーカーから高性能電動車向けの電動パーキングブレーキキャリパーを受注し、22.3期上期(4-9月)に量産を開始する」と日刊自動車新聞が1月22日に報じたことによります。
曙ブレーキ工業の株を持っているので(8000株、平均取得単価141円)、同社について書いていければと思います。
曙ブレーキ工業とは やばい?どうなる?
1929年創業以来、ブレーキおよびブレーキ用摩擦材の開発・生産・販売を行っています。現在は、自動車用から二輪車用、鉄道車両用、産業機械用などのブレーキ事業の他、自動車用を中心としたセンサー事業を展開しています。
(曙ブレーキ工業HPより引用)
曙ブレーキ工業は独立系のブレーキ会社で、筆頭株主はトヨタ(持ち株比率11.39%)、いすゞ自動車(8.91%)となっています。
曙ブレーキ工業は事業再生中
曙ブレーキ工業は業績不振により、会社の経営が苦しくなったため、私的整理(事業再生ADR)を申請し、現在事業再生計画に基づき再生中です。
なぜ、曙ブレーキ工業は業績不振に陥ったのか?
負債が過大なところに、GM(ゼネラル・モーターズ)の受注を逃したから
曙ブレーキ工業は2018年3月期時点の自己資本比率は14%しかありません。このように負債が過大な体質だと、常に金融機関への返済に追われることになりますが、そんな矢先にGMの受注を逃し、キャッシュフローがうまく回らなくなってしまったことから業績不振に陥ってしまいました。
無能な経営陣がトップに居続けたから
曙ブレーキ工業がピンチに陥った一番の原因はこれだと私は思っています。同社は日本のブレーキの約40%のシェアを持っており、北米・欧州・アジアでグローバルに展開している世界的な企業です。
技術的にも優れている同社は、普通に考えれば経営もうまくいくはずですが、それがうまくいかない原因は、55年間続いた「親子経営」が諸悪の根源だと考えます。
前会長兼社長である信元久隆さんは1990年から曙ブレーキ工業のトップに居続けていました。
同社の業績が長期に渡って悪化していたことや、転職サイト「OpenWork(オープンワーク)」に掲載されている社員の口コミを見ても経営陣に対する評価はイマイチで、トップに居座り続けた前会長兼社長の責任は重いと思います。
経営陣に対する社員からの口コミを紹介
OpenWorkで紹介されている経営陣に対する口コミをいくつか抜粋します。
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2021年3月決算の訂正について曙ブレーキ工業(7238)のIRに電話してみました

曙ブレーキ工業の検査データ改ざん不正のニュース
経営再建中の曙ブレーキ工業は2021年2月16日、自動車用ブレーキ製品の検査データを改ざんするなどの不正が発覚したと発表した。
同社は事業再生ADRを申請、成立して2019年10月に新しい経営体制に移行した。同年11月に品質保証部門から社長に対して、子会社の曙ブレーキ山形製造が、ブレーキパッドの一部について、顧客に提出する定期検査報告書の数値を改ざんしていたとの報告があった。これを受けて社内調査を開始したところ、一部納入先から、曙ブレーキ岩槻が製造するディスクブレーキの定期検査報告書に不審なデータが記載されているとの指摘を受けた。
このため新経営陣は、3月中旬の取締役会で、社外弁護士で構成する特別調査委員会を設置し、調査を開始した。この結果、トヨタ自動車や日産自動車など、完成車メーカー10社に納入したディスクブレーキやパッド、ドラムブレーキ、ライニングで、検査データの改ざんや、要求されている検査サンプル数の省力などの不正が行われていた。判明した最も古いものは2001年1月で、約20年にわたって不正が行われていた。
定期報告データ総件数19万2213件のうち、不正があった報告データは11万4271件。そのほとんどが納入先との合意に基づく管理値の範囲内だったとしており、4931件が自動車メーカーが設定していた基準値を外れていた。曙ブレーキでは、対象製品の日常検査による管理データ記録の解析、試験によるデータの検証を実施、対象製品の性能に問題ないと判断し、リコールなどの市場措置は実施しない。
自動車メーカーには順次、事実関係を説明するとともに、対象製品について協議、評価・検証し、2021年1月末に完了したとしている。
同社では、特別調査委員会から提言された、組織体制の見直し・監査機能の強化、生産設備見直しとITシステム導入、教育研修によるコンプライアンス強化、組織風土改革などの再発防止の具体的計画を策定し、取り組みを開始したとしている。
( レスポンス【Response.jp】より引用)
データ改ざん不正対応についての所感
- 外部からの指摘ではなく、社員から新社長の宮地氏への告発で判明したことは良かった。
- 2019年11月に分かったことに対する発表が2021年2月16日になるというのは少し遅いのではないか
- 発表のタイミングは遅いが、調査やその後の対応・関連各社への根回しをしっかりした上で発表したことに対しては宮地氏の手腕を感じる。
- リコールにならなくて安心したが、海外メーカーが何か言いださないか心配
- 翌日の株価下落が少なかったことから、このニュースに対しては市場が折り込み済み・もしくはインパクトが少なかった
- 関連各社への根回しをしっかりしていたので、世間に公表しないという方法も取れたと思うが、あえて公表するところには新体制の透明性が少し見えた。
- 経営責任を明確化するため、宮地康弘社長ら全執行役員の月額報酬を3カ月間10%減額するとのことだったが、これでは少なすぎ、世間に与える印象も薄いので、前会長・社長の責任だとしても、新社長と役員が報酬100%減額など、世間に対してパフォーマンスすべき。
- 前会長兼社長はやはりダメ。
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⇒対応としては不安な点もあり、△という感じがしますが、翌日の株価下落が少なかったことから、世間もこの件を重大にとらえていないという予想をします。事故は買い・事件は売りと言いまずが、インパクトが弱かったので引き続きホールドしようと思います。
曙ブレーキ工業(7238)気になる株価は?
160円(2021年2月19日 終値)
曙ブレーキ工業(7238)今後の株価予想
数年後に1400円、テンバガーを予想します。
曙ブレーキ工業はタカタの二の舞にならないか?
世界のエアバックで2割のシェアがあったタカタが2017年に倒産しました。
倒産の原因はエアバックのリコール問題についての創業家の初期対応やその後の対応がまずかったために問題が拡大し、その結果、倒産しました。
曙ブレーキ工業もタカタの二の舞になるのではないか?という声もありますが、私はそうはならないだろうと思っています。
なぜなら、曙ブレーキ工業は前会長兼社長を退任させ、外部から宮地氏を招いたからです。
ここが、タカタとの大きな違いであり、曙ブレーキ工業に期待できるところでもあります。
曙ブレーキ工業の株を購入した理由
高い技術力・ブレーキ分野における高いシェア
曙ブレーキ工業はブレーキに特化した事業をしており、そのシェアは日本製の新車で46%です。
また、バイクや鉄道、新幹線などのブレーキパッドも供給しています。
そして、独立系のブレーキ会社ながら、日本のみならず世界的にブレーキの供給をしている点も見逃せません。
前社長が退任し、ブレーキの専門家である宮地 康弘氏が新社長に就任した
私が曙ブレーキ工業の株を購入した一番の理由がこれです。
曙ブレーキ工業のようなブレーキに特化していて、高い技術力を有し、しかもグローバル展開している企業の業績が悪い理由の大半は経営陣にあると考えています。
中小企業であれば、業績は社長の力量によって決まりますが、曙ブレーキ工業のような大きな企業であっても、社長の業績に対する影響力は大きいものです。
大きな影響力のある社長が宮地 康弘氏に交代したというのはとてもポジティブなことだと感じています。
新社長である宮地 康弘氏は日本電産で常務執行役員だった方で、日本電産の前はボッシュブレーキシステム株式会社(現ボッシュ株式会社)の執行役員、TMDフリクションジャパン株式会社の代表取締役社長を務めた、自動車部品、とりわけブレーキに強い「プロ経営者」です。
私は宮地氏にとても期待しています。
曙ブレーキ工業の投資判断
以上のことから、私は曙ブレーキ工業のこれからに対して、とても期待しています。
投資判断としては「買い」を推奨します。
しかしながら、現時点ではポジティブサプライズから同社の株が仕手株化しています。
今後の投資戦略については、決算を待って同社の事業再生計画が順調に進んでいることを確認してから購入していくと良いでしょう。